
島根県出雲市に鎮座する出雲大社では、旧暦10月の期間、全国から八百万(やおよろず)の神々が集まると伝えられています。 この時期、多くの地域では神様が留守になるため「神無月(かんなづき)」と呼ばれますが、出雲地方だけは神様が滞在されることから古来より「神在月(かみありづき)」と呼ばれてきました。
「神在月には具体的にどのようなことが行われるのか?」「参拝に最適な時期はいつなのか?」といった疑問を持つ方は少なくありません。 この記事では、出雲大社における神在月の意義や、神々をお迎えする「神迎祭」、縁結びの会議である「神議り(かみはかり)」、そして神々をお送りする「神等去出祭(からさでさい)」といった一連の神事について、最新のスケジュールを含めて詳細に解説します。
この記事を読むことで、神在月の深い精神性を理解し、2025年や2026年の参拝計画を具体的に立てるための知識を得ることができます。 神々と人々が繋がる特別な1ヶ月について、客観的なデータと歴史的背景に基づき紐解いていきましょう。
出雲大社の神在月は八百万の神々が集まり縁結びを話し合う特別な期間です

出雲大社の神在月とは、旧暦10月の1ヶ月間を指し、全国の八百万の神々が出雲の地に集結する特別な時期を意味します。 この期間中、神々は出雲大社の主祭神である大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)のもとに集まり、人々の目には見えない運命や縁について会議を行います。
この会議は「神議り(かみはかり)」と呼ばれ、来年の男女の縁、仕事の縁、さらには農作物の収穫や社会の動向など、ありとあらゆる「縁」が決定されると信じられています。 出雲大社が「縁結びの聖地」として全国的に知られている最大の理由は、この神在月の信仰に由来していると言えます。
神在月の期間中、出雲大社では「神迎祭(かみむかえさい)」を皮切りに、約1週間にわたる「神在祭(かみありさい)」、そして神々をお送りする「神等去出祭(からさでさい)」が執り行われます。 この一連の流れは、単なる宗教行事ではなく、日本の信仰文化における最も重要な神事の一つとして位置づけられています。
なぜ出雲大社に神々が集まり「神議り」が行われるのか

出雲大社に全国の神々が集まる背景には、主祭神である大国主大神の司る役割が大きく関係しています。 その理由は、大きく分けて以下の3つの要素に分類することができます。
大国主大神が司る「幽事(かくりごと)」の権能
日本神話において、大国主大神は「国譲り」の際、目に見える現実の世界(顕露の事)を天照大御神(あまてらすおおみかみ)の子孫に譲り、自身は目に見えない精神世界や運命を司る「幽事(かくりごと)」を治めることとなりました。
この「幽事」こそが、人々の「縁」や「運命」を指します。 そのため、1年に一度、全国の神々が大国主大神のもとに参集し、人々が幸せになるための良き縁を結ぶための相談を行うようになったとされています。 この目に見えない会議の存在が、神在月の核心的な意味を持っています。
神々が宿泊するための「十九社(じゅうくしゃ)」の存在
出雲大社の境内、御本殿の両側には「十九社」と呼ばれる細長い社殿が配置されています。 通常、神社の社殿は特定の神を祀るものですが、この十九社は神在月の期間中、全国から集まった八百万の神々の宿舎(ホテル)として機能します。
普段は扉が閉ざされていますが、神在祭の期間中のみすべての扉が開かれ、神々が滞在されていることを示します。 このような大規模な宿泊施設が備わっていることからも、出雲大社が神々を迎えるための中心地であることが理解できます。
「神無月」と「神在月」の対照的な呼称
一般的な旧暦10月の呼称である「神無月」は、文字通り「神がいない月」と解釈されることが多いですが、出雲地方においてのみ「神在月」と呼ばれます。 これは、地方の神々が出雲へ出張してしまうため、各地方では神様が不在になり、出雲では神様が溢れるという信仰に基づいています。
例えば、多くの地域では神様が留守の間、お留守番の神として「恵比寿様」を祀る「二十日えびす」などの風習が残っています。 このように、日本全国の風習と出雲の神在月は密接にリンクしており、日本全体の宗教的リズムを形作っていると言えます。
神在月における主要な神事と2025年・2026年の日程

神在月の神事は、旧暦に基づき毎年日付が変動します。 ここでは、具体的な神事の内容と、2025年(令和7年)および2026年(令和8年)のスケジュールを具体例として挙げます。
神迎祭(かみむかえさい):稲佐の浜での厳かなお迎え
神在月の始まりを告げる最も重要な儀式が「神迎祭」です。 出雲大社の西方にある「稲佐の浜(いなさのはま)」において、全国の神々をお迎えする神事が行われます。
夕刻、浜で焚かれた御神火(ごしんび)の中で神事が執り行われ、神々は海から龍蛇神(りゅうじゃしん)の先導によって上陸されます。 その後、神々は絹垣(きぬがき)に囲まれ、行列をなして出雲大社へと向かいます。
- 2025年(令和7年)の日程:11月29日(土)19:00〜
- 2026年(令和8年)の日程:11月18日(水)19:00〜
神在祭(かみありさい)と縁結大祭(えんむすびたいさい)
神々が出雲大社に到着された翌日から、いよいよ「神在祭」が始まります。 この期間、神々は「上の宮(かみのみや)」にて神議りを行い、十九社で宿泊されます。 また、一般の参拝者が特に注目すべきは、人々の良縁を祈願する「縁結大祭」です。
縁結大祭は神在祭の期間中に併せて執り行われ、事前に申し込みをした参拝者が参列することができます。 具体的な日程は以下の通りです。
【2025年(令和7年)の主な日程】
- 神在祭:11月30日、12月1日、12月4日、12月6日
- 縁結大祭:12月4日、12月6日(予定)
【2026年(令和8年)の主な日程】
- 神在祭:11月19日、11月23日、11月25日
- 縁結大祭:11月23日、11月25日(予定)
神等去出祭(からさでさい):神々の旅立ち
出雲大社での滞在を終えた神々を見送る儀式が「神等去出祭」です。 神官が社殿の扉を叩き「お立ちー、お立ちー」と唱えることで、神々は出雲大社を後にされます。
ただし、すべての神がすぐに自分の領地へ帰るわけではありません。 出雲大社を去った神々は、次に「朝山神社」や「万九千神社(まんくせんじんじゃ)」へと立ち寄られ、最後に万九千神社から全国へと還っていくと伝えられています。
- 2025年(令和7年)の日程:12月6日(土)16:00〜
- 2026年(令和8年)の日程:11月25日(水)16:00〜
参拝者が知っておくべき神在月のマナーとコツ
神在月の期間中、出雲大社には全国から非常に多くの参拝者が訪れます。 特別な時期だからこそ、守るべきマナーや、より円滑に参拝するためのポイントがいくつか存在します。
静粛を保つ「忌み」の精神
古来、神在月の期間中、地元の住民は神々の会議を邪魔しないよう、大きな音を立てたり、建築工事を行ったりすることを控える「忌み(いみ)」の習慣がありました。 現在ではそこまで厳格ではありませんが、参拝の際は「神々が会議をされている」という意識を持ち、静かに参拝することが推奨されます。
夜神楽祈祷と宿泊の予約
近年、神在祭の期間中に神楽殿で行われる「夜神楽(よかぐら)祈祷」が人気を集めています。 夜の静寂の中で行われる祈祷は非常に幻想的であり、神在月ならではの体験となります。
しかし、この時期の出雲市内の宿泊施設は数ヶ月前から満室になる傾向があります。 特に2026年は11月中旬から下旬にかけての日程となるため、秋の観光シーズンと重なり、さらなる混雑が予想されます。 計画を立てる際は、最低でも半年前からの予約検討をお勧めします。
出雲大社以外にも足を運ぶ
神在月の信仰は出雲大社だけにとどまりません。 先述した通り、神々が最後に立ち寄る「万九千神社」や、神迎祭が行われる「稲佐の浜」、さらには神議りが行われる「上の宮」など、関連するスポットを巡ることで、より深く神在月の世界観に触れることができます。
- 稲佐の浜:神々が最初に降り立つ砂浜。夕景の名所でもあります。
- 上の宮:神々が実際に会議を行うとされる社。出雲大社から徒歩圏内です。
- 万九千神社:神々が最後に直会(なおらい:打ち上げの宴)をして旅立つ場所。
まとめ:出雲大社の神在月は万物の良縁を願う祈りの季節です
出雲大社の神在月について、その意義と具体的なスケジュール、そして参拝のポイントについて解説してきました。 最後に、この記事の主要な内容をまとめます。
- 神在月の定義:旧暦10月、全国の八百万の神々が出雲大社に集まり、翌年の縁を相談する「神議り」を行う期間。
- 主祭神の役割:大国主大神が「幽事(目に見えない運命や縁)」を司るため、出雲が会議の場所となる。
- 2025年の日程:神迎祭は11月29日、神在祭は11月末から12月初旬にかけて行われる。
- 2026年の日程:神迎祭は11月18日、神在祭は11月19日・23日・25日を中心に行われる。
- 参拝の心得:神々の会議を尊重し、静粛な気持ちで参拝する。縁結大祭などの特別な神事は事前の確認が必要。
出雲大社の神在月は、私たちが日常で出会う人々や、直面する出来事との「縁」がいかに大切であるかを再認識させてくれる時期です。 単なる観光イベントとしてではなく、日本古来の信仰が今も息づく神聖な期間として、敬意を持って訪れることが大切だと言えます。
あなたも神在月の出雲で新しい縁を結んでみませんか?
八百万の神々が集い、私たちの知らないところで未来の縁が話し合われている――。 そう考えるだけで、出雲大社の神在月という時期が、どれほど希望に満ちたものであるかが感じられるはずです。 もしあなたが「人生の転機を迎えたい」「素晴らしい仕事や人との出会いを求めている」のであれば、この特別な時期に出雲を訪れることは、大きな一歩となるでしょう。
2025年、2026年のスケジュールはすでに判明しています。 今から少しずつ準備を始め、神々の気配が満ちる出雲の地で、あなた自身の良き縁を祈願してみてはいかがでしょうか。 きっと、大国主大神と八百万の神々が、あなたの歩みを優しく見守ってくれるはずです。
<script async src="https://pagead2.googlesyndication.com/pagead/js/adsbygoogle.js?client=ca-pub-9382978153462669"
crossorigin="anonymous"></script>